そんな母にお土産は何がいいか訊ねたところ、ジョセフシュミットのチョコレートが欲しいという。 このチョコレート、サンフランシスコで作られていて、ハーシーのKiss Chocolateと並び私の一番好きなチョコレートでもある。 手作りのチョコとハンドペイントの箱がなんとも愛おしこのチョコレート、オンラインでオーダーしようかと思いきや、この会社がなくなってしまったことを知った。 もう二度とあの可愛くて美味しいチョコレートにお目にかかることはできないようだ。 残念でしょうがない。
もう一つ、母が私にリクエストしたものは、意外や意外、エプロンだった。 マラウイに到着した頃にミシンを買って、最初に作った私の作品がリバーシブルのエプロンだったのだ。 現地物の派手なプリント柄の布を買って、面白がって幾つも作った。 母は”針と糸の神” みたいな人なので、そういう母に私の作品を提出するのは結構勇気のいることなのだが、幾つか練習を重ねて一番きれいにできたエプロンを日本に送った。 やはり有り難きは母なり。 私の稚拙な作品を心から愛でてくれ、そのエプロンを今でも毎週通っているソーイングのボランティアに着て行っているというからなんだか感動してしまう。 派手なオレンジ色と黒のコントラストのはっきりしたエプロンは日本で着たらかなり目立つだろう。 『あら、変わったエプロンしてるのね? どこで買ったの? それとも作ったの?』 と洋裁仲間に問われると、待ってましたとばかりに、『これはね、アフリカにいる娘が現地の布で作って送ってくれたのよ!!!』 と得意げに話しているにちがいない。 母の姿が目に浮かぶ。 現在85歳。 現役のボランティア。
そのエプロンがもっと欲しいと言うのだ。 これには私も驚いた。 もう作り置きはないし、出発まであと10日しかない。 『布を買って帰ろうか?』 という私の言葉に”自分ではもう縫いたくない!” という返事がかえって来たから驚いた。 まだミシンは使っていると思うのだけど、今まで聞いたこともない母の言葉だ。
物心ついてから家を出るまで、母は数えきれない程私の服を作り続けた。 次から次へと作り続けるから次のデザインを考える暇もないほどだった。 しばらく何も作る物がないと、悲鳴をあげて、『早く次ぎのデザイン決めて頂戴!』 と催促されたものだ。決められない時は同じデザインで違う色、なんていう事もあって、同じジャケットが何枚も出来上がったっけ。
そんな母に育てられた私、母から何か作って欲しいと頼まれたのは50年の間で初めてだ。 電話ではできるかどうかわからない・・・・と告げたけれど、電話を切った後になって、なんだかじわ〜〜〜〜っと胸が熱くなった。 作ろう。 何がなんでも作って持って帰ろう。 85歳の母が私にお願いした最初の作品だもの。
今日は朝からオールドタウンへ裏地を買いに走った。 アフリカらしい、明るくて元気のでるような柄のエプロンにしようと思う。
No comments:
Post a Comment